化粧品化学

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2002年のスキンケアとカラーコスメの世界市場は530億ドルを超えました。 市場に投入される新製品の数は、指数関数的に拡大し続けています。 化粧品化学者は、肌の外観と健康を向上させる興味深いエキゾチックな成分を常に探しています。 これらの製品を供給するためには、膨大な数の化合物が必要とされる。 Cosmetics Toiletries and Fragrance Association (CTFA) の最新版の辞書には、10,000以上の原材料が掲載されています。 何世紀にもわたって使用されてきた原材料のリストに、毎年何百もの新しい原材料が追加されている。 現在使われている原料の中には、アルティミラの洞窟に描かれた動物の絵で、紀元前1万1000年までさかのぼることができるものもあるのです。

歴史

スキンケア処方の出現は、紀元前3000年頃の古代エジプトにさかのぼります。 ほとんどの調合剤は天然素材から調合されていた。 クレオパトラはロバの乳液で入浴し、肌をなめらかに保ったと言われています。 古代人が使用した天然素材のひとつに、レッドオーカー(酸化鉄)がある。 鉄が酸化したり錆びたりすると、赤い鉱石の塊ができる。 この赤い酸化鉄は、古墳の中で儀式用の口紅やルージュとして発見された。 また、アルティミラに見られるような古代の洞窟の動物の絵を描くのに使われ、現在でも多くの化粧品に使われている

図1. ホスファチジルコリン(PC)。

現在も使用されている。 また、古代の墓地からは目の塗料が発見されている。 これらの塗料は、近くの採石場から採掘されたマラカイトという銅ベースの緑色の鉱石が主成分である。 動物性脂肪は乳香や没薬などの香りのある物質と組み合わせて、初期の皮膚軟膏を作りました。 さらに洗練されたクリームやローションは、試行錯誤の末に改良され、何世代にもわたって受け継がれていったのです。

エマルジョン

クリームやローションの多くはエマルジョン(乳化剤)です。 エマルションとは、簡単に言うと、混じりけのない2つの液体のうち、一方の液体がもう一方の液体の中に細かい液滴として分散している状態のことです。 水中油型(o/w)エマルジョンの典型的な例として、均質化された牛乳が挙げられます。 乳脂肪(オイル)は、ホモジナイズ処理によって水中に微細な液滴として分散される。 乳脂肪がすぐに上部に浮き上がらないのは、乳化剤の存在によるもので、この場合はカゼインナトリウムという乳タンパク質と数種類のフォトリピドが含まれている。 油中水型エマルションの場合、水は液滴として油相に分散し、懸濁している。 分散していない液体または外部懸濁相は、連続相とも呼ばれる。 大豆油の連続相に微細な液滴として分散した酢水のマヨネーズは、油中水型エマルションの一例である。 卵由来のレシチンは、マヨネーズ乳化物を安定化させる。

界面活性剤

ほとんどの乳化剤は、界面活性剤または表面活性剤と考えることができる。 これらの材料は、水の表面張力を低下させることができる。 乳化剤の界面活性は、そのHLB(親水性-親油性バランス)に関連している。 HLBは、分子の親水性(水を好む、または極性)部分の大きさと親油性(油を好む、または非極性)部分の大きさの比較によって決定される。 HLBシステムは、物質の相対的な極性をランク付けするために作られた。 極性が高く、水溶性の材料は20点満点で、非極性で油溶性の材料は0点に近い。 カゼインナトリウムは水への溶解度が高いため、HLBは約14に設定されています。 レシチンは水への溶解性が低いため、HLB値は6程度である。 どちらも極性基を持っています。 乳タンパクの極性基はナトリウムです。 レシチンの界面活性成分は、ホスホチジルコリンまたはPCと呼ばれる分子である(図1参照)。 PCの極性、つまり水に溶ける部分はリン酸官能基である。 乳化剤の極性基は、極性水相の方向に向く。 親油性で非極性の基は、油相の方向に配向し、ミセルを形成する(Figure 2参照)。 これらの球状構造は、水素結合と弱い電気力によってエマルションに安定性を与える。

図2. 界面活性剤。

スキンケア用乳化剤は、イオンの電荷に基づいて2つのグループに分けられる(図3参照)。 荷電種に解離することができる物質はイオン性であると考えられ、そうでないものは非イオン性であると呼ばれる。 イオン性乳化剤は、電荷の種類によってさらに分類することができる。 アニオン系は、ステアリン酸ナトリウムや石鹸のように、溶媒和したときに負に帯電する。

脂肪酸をアルカリと反応させると石鹸になる。 石鹸の生成過程は鹸化と呼ばれる。 負に帯電したステアリン酸基が石けんの主な乳化単位となり、陰イオン性の分類が与えられます。 プラスに帯電した乳化剤はカチオンと呼ばれます。 クオーターニウム24の乳化単位は、正電荷のアンモニウム基に解離する。 両性は、負と正の両方の電荷を発現する化合物である。

非イオン性乳化剤は、安全性と反応性の低さからスキンケア用乳化剤によく使用されます。 一般に化学的類似性により分類される。 グリセリンは、その保湿性から化粧品用乳化剤によく使用され、グリセリルエステルと呼ばれる乳化剤の骨格を形成しています。 モノステアリン酸グリセリン(GMS)は、エステル結合が1つであることからモノエステル(図4参照)と呼ばれている。 ジエステルは、グリセリン1分子につきステアリン酸2分子をエステル化したものである。 グリセリンモノエステルおよびジエステルは、極性水酸基と非極性脂肪酸の両方を含むため、非常に有効な乳化剤である。 グリセリンの水酸基を3つとも反応させると、得られるトリエステルには乳化作用がほとんどありません。

ステアリン酸はC18脂肪酸と呼ばれる。 油脂に含まれる脂肪酸は、炭素鎖の長さによって分類される。 ステアリン酸は美容に使われる油脂の多くに含まれているため、ステアリン酸系乳化剤は特に有用である。 脂肪酸は、様々な天然油や合成油に混和するため、多くの化粧品用乳化剤の主要な成分となっています。

図3. 乳化剤の構造

図4. グリセリンの直接エステル化。

ポリエチレングリコールやエチレングリコールをエステル化したものをPEGエステルと呼んでいる。 PEGエステルの溶解度は、酸1分子に対して反応させたPEG分子の数で決まる。 例えばPEG 6 oleateはオレイン酸1分子に6分子のPEGを反応させたものである。 酸1分子あたりの極性PEG分子の数が増えると、水溶性/HLBは増加します。PEG 8 oleateはPEG 6 oleateよりも水溶性が高くなります。 化粧品化学者は、様々な油脂を乳化するために必要な極性を決定するために、HLB値の高いグリセリルエステルと低いPEGエステルのブレンドを使用することが多いようです。 乳化剤の種類は非常に多く、ここで紹介しきれませんが、McCutcheon’s Emulsifiers and Detergentsがより完全なリストとして優れた情報源となっています。

エモリエント剤

パーソナルケアおよび美容製品に使用されるエモリエント剤の大部分は油脂であり、脂質とも呼ばれています。 動物性油脂は、主にステアリン酸とパルミチン酸からなり、炭素鎖長はそれぞれ18と16である。 大手化粧品会社の多くは、獣脂のような動物性素材から、再生可能な植物性素材へと移行しています。 ココナッツオイルやパームカーネルオイルがよく使われています。 優れたエモリエント剤に求められる主な特性は、のびが良いこと、毒性・皮膚刺激が少ないこと、酸化安定性が良いことです。 オリーブオイルの主成分であるオレイン酸は、二重結合を持つため酸化安定性に劣る。 油脂は、二重結合がないものを飽和油といいます。 オリーブオイルのような不飽和の油には二重結合があり、特に加熱すると酸素と反応する可能性があります。 この酸化の過程で、脂質に色やにおいがつき、腐敗して使えなくなることがあります。

石油ゼリーやミネラルオイルなどの石油系エモリエントは、二重結合や反応性の官能基を持たないため、多くの製剤に使用されています。 シクロメチコン、ジメチコンなどのシリコーンオイルは、滑り性やエモリエント性を高めるためによく添加されます(図5参照)。

必須脂肪酸(EFA)を多く含むオイルは、皮膚の層に自然に存在する脂質(油分)を補う能力があるため、珍重されている。 リノール酸はEFAの一種です。 長鎖アルコールは、脂肪アルコールとも呼ばれ、エモリエント剤や乳化安定剤として有用である。 極性のある水酸基は水相に、脂肪鎖は油相に配向します。 脂肪アルコールと脂肪酸のエステルは、反応性が低く、安定性が高いため、優れたエモリエント剤となります。

羊の毛から作られるラノリンは、ウールグリースと呼ばれることがあります。 ラノリンは、複雑なステロール、脂肪アルコール、脂肪酸からなるユニークな組成のため、何世紀にもわたって使用されてきました。 コレステロールは

という環状分子で、図5. ジメチコンとシクロメチコン。

ステロールと呼ばれる環状分子が主成分である。 ステロールとアルコールの極性水酸基により、グリースは水を吸収し保持することができる。 皮膚は主に水で構成されており、栄養を与え保護するために無数の油脂やエモリエント剤が使用される。

保湿剤

保湿剤とエモリエント剤の主な違いは、水への溶解性です。 健康な肌には水分が必要です。 保湿剤は一般に吸湿性のある極性物質であり、水分を保持する性質があります。 保湿剤の効果を評価するための重要なツールは、ハイスコープです。 これは、経表皮水分損失(TEWL)を測定するものです。 保湿剤を皮膚に塗布した後、水分レベルを記録します。 数分後、水分レベルは、時間の経過とともに水分を放出する皮膚の自然な傾向により減少します。 皮膚の上層部で数時間にわたって高いレベルの水分を維持できる成分は、水分が失われる速度を抑えることができます。 グリセリンは、TEWLの軽減を助けるために使用される、非常にコストパフォーマンスの高い成分です。 また、ソルビトール、スクロース、グルコース、その他の糖類も、皮膚の水分補給によく使用されます。 アロエは、多糖類、炭水化物、ミネラルの混合物で、優れた保湿剤である。 冬場は肌の乾燥が進むので、水分をより閉じ込める素材を取り入れることも必要かもしれません。

ワックス

ワックスは長鎖エステルが主成分で、常温で固形です。 溶けたワックスに指を浸したことのある人なら誰でも、その密閉性を体験したことがあるはずです。 化粧品によく使われるワックスには、ミツロウ、キャンデリラ、カルナウバ、ポリエチレン、パラフィンがあります。 ワックスの融点は、その独特の組成や鎖の長さによって大きく異なります。 一般的にリップクリームやスティックに使用されるワックスは、スティックが自立するのに十分な剛性を与える構造化剤としての機能と、バリアーとしての機能を持っています。 光沢、柔軟性、脆さなど、異なる特性を持つワックスを組み合わせることで、最適な化粧品性能を実現することができる。 ワックスと相性の良い油剤を組み合わせることで、望ましい柔らかさを実現することが多い。 相溶性は、一般的に2つの素材を融点以上で混ぜ合わせたときの濁りや分離の度合いによって判断される。 ワックスは、その増粘性と防水性のために、ハンドクリームやマスカラ乳液に特に有用です。

増粘剤

薄い化粧水に十分な量のワックスを配合することで、濃厚なクリームを形成することができる。 増粘剤の多くは高分子である。 セルロースは

の繰り返しの微粉末ポリマーで、図6に示す。 セルロースとカーボポール

D-グルコースの単位で、お湯の中で膨潤し、ゲル状のネットワークを形成する。 ポリアクリル酸であるカルボポールは中和すると膨潤する(図6参照)。 ベントンクレーは、カードを積み重ねたような構造が機械的なせん断によって開かれると膨張する。 カラギーナン、ペクチン、ローカストビーンガムは化粧品用の増粘剤で、ゼリー、サラダドレッシング、パイのフィリングなど、私たちの大好きな食品にも使用されています。

有効成分

皮膚の中で生理的に働く物質や、皮膚を刺激から守る物質も、有効成分と呼ばれます。 皮膚科医のAlbert Kligman博士によって作られた「cosmeceuticals」という用語は、化粧品と医薬品の中間のような製品を指します。 化粧品は、法的には皮膚の表面を美しくし保護するものですが、多くの化粧品は、皮膚の真皮層に浸透し、生理的な変化をもたらすことが確認されています。

フルーツ酸は、活性物質の一例です。 アルファヒドロキシ酸またはAHAとも呼ばれ、皮膚に浸透する能力があり、コラーゲン、エラスチン、細胞内物質の生産を増加させ、皮膚の外観を向上させることができます。 何千もの化粧品用活性剤が、さまざまな方法で肌に影響を与えるために使用されています。 それらは、肌を明るくし、引き締め、引き締めるために使用されます。 アルミニウム・クロロハイドレートのように、発汗を抑制するために使用することもできます。 サリチル酸や過酸化ベンゾイルは、抗ニキビ作用があるため重要な成分です(図7参照)。 また,環境から皮膚を保護するために,皮膚治療薬に添加される活性物質もある。 ジメチコンやペトロラタムは、皮膚保護剤の一例です。

日焼け止め

日焼け止めは、紫外線から皮膚を保護する化合物の一種です。 290nmから400nmの波長は、特に皮膚にダメージを与えます。 これらの有害な波長を吸収または反射する日焼け止めの能力は、SPFまたはサンプロテクションファクターで評価されます。 例えば、15%の日焼け止めを塗った人は、塗らない人に比べて15倍長く日光に当たれることになります。 メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、二酸化チタン、アボベンゾンは、重要な局所用サンスクリーンです。 これらは、吸収する波長によってUVAとUVBの日焼け止めに分類される。 水溶性紫外線フィルターのベンゾフェノン4は、化粧品の色を保護するために一般的に使用されています。

図7. 過酸化ベンゾイルの構造。

製品には、色をつけるために顔料や染料が使われている。 二酸化チタン(TiO 2 )は採掘される白色顔料である。 酸化や水和の度合いによって、赤、黄、黒、茶などさまざまな色を持つ天然鉱山や合成の酸化鉄と組み合わせることで、ほぼすべての肌色に適した色を作り出すことができます。 フェイスパウダーは、無機酸化物とフィラーを配合することで製造される。 フィラーとは、カオリン、タルク、シリカ、マイカなどの不活性で、一般に安価な材料で、色を伸ばしたり発色させたりするために使用される。 アイシャドウやブラッシャーなどのプレスドパウダーは、オイルやステアリン酸亜鉛などの結合成分をさらに配合し、その混合物をパンにプレスすることで調製されます。

アイシャドウや口紅には、一般にパールと呼ばれる真珠光沢顔料がよく含まれています。 真珠は輝き、多くの色を生成するために光を反射します。 これらは、雲母の薄い板状のものに色の薄い層を沈殿させることで調製されます。 析出させた色の厚さを変えることで、複合体でありながら屈折する光の角度を変え、さまざまな色を作り出します。

口紅やアイシャドウの色付けには、有機顔料が使われます。 有機物を基材上に沈殿させたものを湖沼顔料と呼ぶ。 レイクとは、アルミニウム、カルシウム、バリウムなどの金属基材に有機塩が湖水化または沈殿することを指します。 D&C(医薬品、化粧品)、FD&C(食品、医薬品、化粧品)カラーと呼ばれる。 例えば、D&C Red#7 calcium lakeやFD&C Yellow #5 aluminum lakeなどがある。 FD&C Blue#1やD&C Yellow#10などの染料は、顔料が不溶性であるのとは対照的に、容易に可溶性である。 染料は、ローション、オイル、シャンプーの色調を整えるのに有効です。

防腐剤

ほとんどの化粧品には、微生物による汚染や腐敗を防ぐために防腐剤の添加が必要です。 グラム陽性菌に有効なパラベンとパラ安息香酸エステルは、圧倒的によく使われています。 フェノキシエタノールは、グラム陰性菌から保護するために使用されます。 化粧品化学者は、一般的に、異なる細菌株や酵母、カビから保護するために、防腐剤の混合物を使用します。 トコフェロール(ビタミンE)やBHTなどの酸化防止剤も、敏感な成分の酸化を防ぐだけでなく、フリーラジカルによるダメージから皮膚を保護するために添加されます。

まとめ

若さや美しさを重視する社会が続く限り、化粧品化学はこれからも発展し続けるでしょう。 パーソナルケア製品の処方には、乳化化学と皮膚生理学の基本をよく理解していることが前提になります。 優れた化粧品化学者は、科学と芸術を組み合わせて、消費者が望む感触と外観を持つ製品を作り出すことができなければなりません。

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